山脈/森の猫
 
しない
ように 目を光らす

ゴウゴウ ゴウゴウ音がして
また 雪が降り出す合図
雷だ

冬の雷というものも
はじめて知った

寒いというより
冷たい 痛い 冬

覆いかぶさる山脈
もう 美しいと思えない

あたしと
あたしの故郷を隔てる
なにものでもなかった

その頃は
疑問も持たず 文句も飲み込んで

ただ ただ 
自分の仕事だと思いこなしたことが

今 走馬灯のように蘇る
辛さを押し殺していた日々
それをあたりまえだとおもわせたもの

なんだろう

あたしは今になって
そのことに気づいてきた

あたしは
いい妻でもない
いい嫁でもない
いい子でもない

破天荒 自由なものだったと

山脈の向こうには
もう 10数年行ってない

長岡を降りると
空気が一変する

北の国の威圧感

観光で訪れるのとはちがう
感触

きっと
山脈の向こうに移り住んで
いたら

あたしは
たぶん
自分を殺していた
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