騒/イシダユーリ
 
首筋が
タバコの煙のむこうで
弾かれるヴァイオリンのようだった

きみに
伝えたかった
だけ
けれども
それは
犯罪だ
遠くにいたともだち
遠くにいったともだち
遠くだったともだち
BECK'S COFFEEの
むかいにある
大きい男と
大きい女の
マークに重なって
つっ立つ
みなかった残像
交番を
うつろに見つめる
眼球
通行人に
ふれなかった
皇帝たちが
毒を
あおっている
 きみの
 ことが
 ほしかった
一行ずつ
もどってくる
化石
わたしが
きみに
伝えたいことが
きみの
膜という膜を
破れば
いいだろう
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