穏やかに午後を迎えている/瀬崎 虎彦
 
夏の残響はセロファンのむこうで
けたたましい音をたてる 鬣を震わせて
道々の声や言葉と重なり合う天気記号が
すっと屹立する給水塔の直下 君の真上

指先にしろくどこまでも絵の具を伸ばし
長方形と長方形を組み合わせて展開する
古びた喫茶店のテーブルには幻の
爪あとが浮き上がるように刻まれている

呼吸を止めて誰もいない水辺に立ち尽くす
太陽は屹立する給水塔の直下 君の真上
この手を突き出すように差し伸べて切断される

寂しさが凝るものならばいまごろは
自重に耐えかねた南極大陸が沈んで
僕たちは穏やかに午後を迎えている
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