秋の日 /まんぼう
水晶石に似た秋の日
マツムシソウの咲く藪に潜み
椎の実の落ちる音を聞いていると
誘う声がした
老いたハンミョウは処女のように
悲しげに首をかしげる
ダフネは立ち止まり
誘いつづける
いちめんのすすき野を駆ける
硬くこわばったアキレス
さびしく恋い慕い
あの赤いのはワレモッコウ
あなたに似たリンドウ
・・似たツルギキョウ
あの女が囁く
耳元で
水の
流れる音がする
まだ叱っているのか
わたしを
夢を見ていたのか
目覚めると思いだせない
人であったような
獣であったような
抱きしめていたのに
嗚呼そこか
黄葉したクヌギの陰
忘れられた歌の調べがながれ
ナナカマド実が赤く色づく処
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