写真のこと/「Y」
から、主に、人物を撮ってきた。
肖像写真ではない、歩道を通り過ぎる人々の顔である。
使うフィルムはモノクロで、現像も紙焼きも、すべて自分で行う。デジタルカメラは持っているが、普段使うのは、昔ながらのフィルム・カメラである。
最初は、車の中から人の顔を撮っていたが、だんだんと、遠くの被写体を追うことに満足できなくなってきて、路上を歩き回って人の顔を撮るようになっていった。
人の顔は撮っていて飽きない。顔の表面には、その人がそれまでに辿ってきた人生の航跡が刻まれているように私には思える。単なる肖像写真は、私が最も撮りたいと考えている、被写体の生きざまが、その顔の表面から消滅してしまうの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)