写真のこと/「Y」
 
から数ヶ月前の、新宿駅前でのことである。結局私は、自分が怪しい者ではないということを示すために、運転免許証を彼女に見せ、電話番号を教えた。
「いや、本当に済みません、これから気をつけます」
 別れ際、私は紳士的な笑顔を作って彼女らに会釈した。母親は、引きつってはいたものの、きちんとした笑顔を私に向けてくれた。疑念を解いてはいないけれど、私が自身の素性を明かしたことで、警戒のタガを一段緩めたようだった。

 私は、彼女の子供であるベビーカーの男の子を、すれ違いざまに撮影していた。
 まだ現像をしていないので、うまく撮れているかどうかは分からない。

 写真を撮るようになった最初の頃から
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