海を渡る狼/小川 葉
 
 
 
てのひらを
みみにあてると
なみのおとがきこえる
そのうみを
いっぴきのおおかみが
わたっていく
とおいむかしに
ほろんでしまった
くにのしきちに
さくらがさいている
そこにもうみがあったことを
しょうめいするように
てのひらをはなすと
みみはかいがらににている
のこされたおおかみが
うみをわたっていく
すこしずつ
むかしになっていく
みらいのまちで
わたしのおおかみが
ぜつめつするまで
うみはつづいている
 
 
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