思い出すことしばしばです/瀬崎 虎彦
ちいさな波の数を数えられないように
あなたの涙はたぶんすくわれない
それでもよいなら泣いてください
話を聞くことくらいしか出来ませんが
背の高い白樺の森を抜けて
寒々しい冬の空にあなたとふたり
なにものも持ち合わせないので
ただあなたのてを握り返すことしか
いずれパステルブルーの空の断片が
雲の隙間に顔をのぞかせることでしょう
見えますか あの山のいただきの向こう
わたしたちがもう少し幸せだった頃に
あなたが聴かせてくれた外国の映画の話を
最近ひとりでいるときに思い出すことしばしばです
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