ヒイラギ/ハノ
生ぬるい夜だ。時折吹く風は昼間とは違って重さがなく、ただ空気をかき混ぜて通り過ぎる。
僅かに髪を揺らす微風が心なしか清涼に感じることに、人の生み出した毒が世界にあふれているのを知る。
夜の風はやさしい。
光の存在しない天球に真の世界の有様を見たような気がして、世界は本当は真っ暗なのだ、と思う。
横殴りの風に木はざわめく。
どこにも属せなかった木の根元はコンクリート。
ほんの数メートル先の塀の中では大地にしっかり根付いた樹木達が生い茂る。
人は自分に都合のいい植物にしか存在を許さない気か。益をもたらす植物以外は切り捨てていくのか。
人が植物を選別する権利などどこにある。
根元がコンクリートの木は存在を許されているだろうって?これもまた樹齢という付加価値の為残されているにすぎない。
その柊が好きだった幼き日の私が否定するのだ。
樹齢など知らなくてもその柊は素晴らしかったと。
樹齢だけがその木の価値であるように人がその価値を規定する事が息苦しくて仕方ない。
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