妹/ゆるこ
 


一人暮らしを始めてからまだ一年位なのに
だいぶ大きく逞しくなったと思う
濃くなった今時のメイクで貼付けた防波堤の中に
小麦色の残像が見えかくれするけれど


***


一人になるということは
色んな支えがすこしなくなることであり
今まで誰かが隠していたものを
全て自分で隠さなければいけなくなることで
それはそれはとても大変で
簡単なことではないから
彼女はいつの間にか 私の知らない間に
ハリボテの蝶になってしまったのかもしれない


***


「ねーちゃんといると、まともにならなきゃいけないきがする」


呟く声はまるで父親が亡くなった頃に聞いた
かぼそい少女の声そのままであり
妹はいつの間にか迷子になってしまっていたことに
私はようやく気づいた


薬をかじりながら妹は飛ぶ
その姿はあまりにも儚くて
ハリボテの羽があまりにも逞しくて
すこしだけ、手を握った




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