春の切符/小原あき
 
自動改札機なんてまだ無い頃
駅員さんに
切符に切り込みを入れてもらう
そのタイミングを計るのに
ドキドキしていた

ちょうどよく駅員さんの前に
立ち止まることができるかどうか
改札に入る前に
何度も何度も
頭の中でシュミレーションをする

自動改札機に挟まれるのとはちょっと違う
たとえ取りこぼしても
やたら大きな機械音で
周りを驚かすこともない
だけど、取りこぼしたときに
上手く笑えるかどうか

しょきん、と綺麗な音が鳴って
スムーズに改札を通れたときは
一人前になれた気がした

Mの字の勲章
それは桜の花びらに
ちょっとだけ似ている









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