春の切符/小川 葉
 
 
 
恋をしたのだと
人に告げると
恋はなぜか
はかなく散る

だから僕は
無人駅で
一人列車を降りた

切符は思い出に
コートのポケットに
恋の日付が
記されたまま

鳥が囀り
桜が咲くと
道端には野の花が咲き
人だけがいない
無人駅に君がいる

キセルして会いにきたのだと
僕は話さなくていいし
君も聞かなくて良かった

誰も知らない
恋はやがて
愛と言う
自然現象に
化していくのだった
 
 
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