元トラックドライバーの苦悩/アマメ庵
 

ぼくは 忘れることが出来ない
腰に染み付いた ヂーゼルエンジンの鼓動
ラジアルタイヤの ノイズ
ぼくは 忘れることはないだろう

無闇とワッパを握っては
只管テールランプを追い
朝日を求めて走った

視界は幻像を写し
理性は浮遊した
聴覚は振動のみを知り
四肢はトラックの一部と化す

そこに なにがある

永遠に続く道

その向こうにも

そのまた向こうにも

骨身を賭し
走り続けることは 無意味だ
その先には あらゆる救いも慈悲も存在しない
道はどこまでも
或いは 兜卒天までも続く

しかし 忘れることの出来ないあの鼓動
きっとぼくは 
あの夜の国道に帰っていく

そこは ぼくの生きる場所ではない

そこは ぼくの死ぬ場所

信号を突破せよ
ポリ公は糞喰らえ
体制を破壊せよ
アクセルは緩めるな

ぼくは
路肩に腹を晒し
徒に血を流す

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