ちょこれいと/あぐり
 
みじかんにすこしでもたべたらいいとまいあさおかあさんはいっぱいいっぱいつかんでわたしにくれるんだ。夏にはそれらはとろけてりんかくがふやあっとなってそれでもすこしずつなめていた。ちょこれいとをたべたひのよくしつは、赤黒い海で。わたしはそのにおいでもういっかいはく。おかあさんのしんぱいのぶんだけちょこれいとはまいにちまいにちふえていって。わたしはまいにちまいにちそれをかえりみちでなめつづけていた。




かするような記憶にのまれていく
ちょこれいとがきらいです
ちょこれいとがきらいです
街中にあふれかえるちょこれいとのその甘いにおいに気づく度に
あのころの浴室を思い出している

(海、海、それは海)

あの家の浴室はまだ
あまくるしい海をたたえているんだろうか
そうしてわたしにはもう
チョコレートを手渡してくれる人がいないという苦さが咽にはりつく

ちいさくちいさくうなづいた。
だれかがみていた。
だれかがみていた。




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