新しい戦争/小川 葉
になれる
この国の生き残りをかけた時代が
ふたたび訪れていた
マクドナルドで
夜食を食べた
爆撃の音はしなかった
かわりに疲れ果てた兵士たちが
白旗を降ることもなく
テーブルに体を倒して眠り
床にはコーヒーがこぼれていた
次の兵士たちが
店の外で
行列になって待っている
彼らはまだ若く
あの戦争を知らないはずなのに
死ねるものなら
戦場で死にたいらしく
砲撃しない敵陣地の
アメリカのファーストフード店で
明日死ぬかも知れない一時を
安心したようにして
過ごしている
まだ戦っている
そのことに違いはない
明日の朝
九時になれば
アメリカは攻めてくる
しかし敵は
もはやアメリカではなかった
他人でもなかった
決して
自分でさえなかった
一時間の昼休み付き
五時には終わる砲撃の後
終わることは
何ひとつなかった
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