霧の中浮きは沈まず/北村 守通
しょっぱい雨が滴り落ちる
時折
視界が白くぼやける
火をつけたばかりの煙草の軸に
見事に雨粒がヒットする
もう一粒ヒットして
見事に折られる
温かいはずであった
休日の皮算用が
一つ
また一つと
見事に折られる
冷えすぎたはずの
酒かすまみれになって
粉っぽくなった握り飯が
温かい
口の中でまとわりつく
波が時折
足元を洗う
波はいつでも
足元しか
洗い流してくれることはなかった
洗い流してほしいものだけは
しっかりと残していって
残してほしいものは
きれいさっぱりと
根こそぎ掃きとっていく
しょっぱい
雨が口の中に流れ込んでくる
煙草に火をつけることを諦める
今日の一日を諦める
しょっぱい雨を吸い込んだ
化学繊維の数々が重い
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