ぼくのだいすきなキリン/蠍星
 
ぼくのだいすきなキリンは
いまは海の底に居る

まだぼくの魂が
果実のようにやわらかだったころ
キリンが夜泣きをやめられないぼくの
なみだをそっと舌でぬぐってくれたのをおぼえている
キリンのひとみはビー玉の透明さで
ぼくの半分ほどの背丈で

ぼくのだいすきなキリンは

ぼくの日々はかなしみに充ちていた
キリンといっしょに眠ったし
キリンといっしょにめざめたけれど
ぼくは毎晩ひとりで泣いていた
ぼくのなみだはくるぶしのあたりまで濡らしていた
ぼくのなみだはキリンのひづめも濡らしていた

とうとうぼくののどのあたりまで
なみだが攻めてきた
あんまりに冷たいので
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