秋の日の感傷/岡村明子
 
いちょうのにおいをかぎわけるころに
どちらからともなく手をつないだゆうぐれ
言葉を待っているでもなく
色づいた葉が落ちていくのが
コマ送りのように目に焼きついて

図書館前の噴水は
夏をすぎると水を抜いてしまう
そこはただの広場になって
昼休みには学生がランチをひろげ
そのランチを目当てに猫も集まる

一匹の猫が
怪訝そうにこちらを見ている
見られていることで
緊張した背中に
またひとつ
落ち葉が

「あと半年」
と突然口を開く
「あと半年たったら」

ひとりごとのように投げ出された言葉は
落ち葉に洗われて
いつしか
黄色いシャワーの中に拡散して
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