lord/イシダユーリ
純粋な愛は歌のなかにしかない
ひとりきりでずっといる
名前が散乱していて
それがいままで出会った
だれでもないことに
泣いても
みな立ち上がって
拍手する
純粋な愛は歌のなかにしかない
拍手がずっと鳴りやまない
夢の中にまでひびいている
一秒前のきみは
もうきみではないし
一秒前のわたしは
もうわたしではないので
つなぎとめるものは
通行人の一瞥や
公共料金の領収書
そして
数々の商品タグ
拍手がちいさくなると不安だ
拍手がおおきくなると苛苛とする
どちらも
からだを震わす
そして
おおきくなったのか
ちいさくなったのか
忘れてしまう
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