黒い海/アクアステル
朝起きて海が見たくなった
眼の前に広がる海
曇り空のせいでなく
この海はなんて黒いのだろう
誰もいない防波堤で
水平線を眺めながら
ここから生命が誕生し
育まれたと仮定することは
人間の原罪を証明するようで
不安な気分になりますが
我々はみな心の奥に
黒い海を持っていることを
知っているくせに
それに気づこうとしない
そんな偽善に満ちた
世界に生きているからこそ
この黒い海は
わたしに不安と同時に
懐かしさのようなものを
感じさせてくれる
汚れた悪意のある海こそ
我々のふるさとなのだ
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