進路指導/朧月
隣のうちの高校三年の息子が
看護師のおかあさんとバトミントンをしている
野球部だった息子は真っ黒な顔で
看護師のおかあさんは真っ白な顔だ
二人とも真剣な顔でバトミントンをしている
道の真ん中で試合している
ときどき歩行者が通ると
合図をだして休止する
歩行者がいってしまうと
無言で試合は再開する
ぱしゅ ぱしゅ 空気をうつ音がする
春の風に ぱしゅっと音がのってゆく
二階の窓からずっと
それをみている私の
窓のうちがわでは
昨日の私がいきばをなくしている
あんたなあ
おかあさんの声がした
ああ
息子が返事をした
おかあさんが 汗をぬぐう
息子の顔色は黒すぎてわからない
おかあさんの ガッツポーズをみた瞬間
空が静まり返ったので
私はいそいで窓を閉めた
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