かすかな期待を抱いただけ/瀬崎 虎彦
夕暮れに宇宙船がよく似合う
町から町へ 港から港へ
電子が行きかうせわしなさと
カスタードクリームみたいな浮雲
閉ざされた場所で自由だったから
外の世界に出てわからなくなった
生きることはこんなにも大変で
毎日が造化の奇跡に彩られているとは
酸素の濃度と天気予報を気にしながら
ジャケットの襟についた桜の花びら
見上げるものがいつも大きなものとは限らない
君と一緒に生きられるならもうすこし
善良な生き物になれるのではと
かすかな期待を抱いただけなんだ
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