重い春のレクイエム/朧月
 
猫がとなえる雨乞いの呪文
断りもなく春は重い
丸い肉球で世界を救う
そのとき僕はなにをしてるんだろう

花が咲いたと風が笑う
影がこっそり出かけてゆく
桃色のブーケをいっぱいつくる
黒い影なんてもうどこにもいない

猫がまとった桃色のブーケは
桜の花びらのリングでできてる
影もブーケで桃色になった

春の世界に嘘つきは住めない
とりかえっこで桃色にならなくちゃ
君の罪を花で洗えば
川におちるよ水色の雫

猫がそろそろあくびをしたら
断りもなく春を切り捨てる
薄い爪でかくよ
愛しい君の名前

白のミュールがかたっぽ
おちてる


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