ことばの自転車が通り過ぎていく…麦朝夫さんの詩を紹介します/石川和広
 
麦朝夫さんという詩人のひとを
ぼくは知らなくて
知り合いのうちで読んで見つけて
なんだか
寂しく静かな思いがした。
それは、平日の昼間
なにもすることがなくて
近所の図書館に走り
空を見上げると冬の青が
光っていたというような、
そんななんでもなく
とおりすぎていく孤絶の感覚だ。

そうそれは、何度も通り過ぎていく
ひとりの瞬間
まさに、生の通行人を覚悟した瞬間が謳われている。
そして確かに彼の人肌、眼のぬくもりを感じさせるのだ。

しかしヤフーで検索したが、読者がとても少ないようだ。
とても残念なので、一篇だけでも、取り急ぎ
よんでみて!という感じで紹介します。
大阪の南の人。彼は御年70歳だ。作品は「道で」…



  道で

 やせたおばあさんと
 すれ違ってふと見たら
 かすれた口笛を吹いている
 胸もとへ隠すみたいに

 のぞきこむな のこしたうたを
                 
             *麦朝夫「数行詩集」詩学社 1999 57頁

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