島野律子小感/葉leaf
 
道を通いつづけた長い時。たしたりひいたりだ。父の口癖をどこにしまっていたのだろう。ひとはおかしなことをする。夢のいる眠りが怖かったころに聞いた水音が、突然しみだしてきた服のすそに、埃が吸い寄せられていく。掃除嫌いは治らないよ。そうだ、でも。ここに座り込んでいるいわれなんかないじゃない。冷えた指をまるめて席を立つ。


1.遊戯の快楽

q1 夏の足首に結ぶ雨雲の細い影が引きずる冷めた匂い。(「遠回り」より)

 世界の事物が相互に複雑に関係しあっていることを、おそらく島野は熟知している。そして島野は、「匂い」を起点にして、どの関係を用いて、どの事象と接続させるか、そして接続された事象
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