春のこと/山中 烏流
風の音がする
窓越しに見上げた、トタンの屋根が
端っこの方から剥がれるのを
何も言わずに見ている
***
きちんと真ん中ではない、
いわゆる
真ん中の方、とか呼ばれてしまう辺りが
しくしくと痛む毎日
通り過ぎる人々の目や、足並みに
新芽の影を見て
私は
川沿いの石畳を走りながら
溜め息と引き換えに、呼吸をし続けている
***
街路樹は今、思春期を迎えた
その姿を
様々に変えていく過程に
少女たちのそれを見て
何も、話せなくなる
{引用=紅を引いた無数が
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