もらす/あぐり
 


こぼしちゃいけないってがまんしているきみの
その眉間のしわが好きなんです
吐息が融解していく夜の海に
降りしきる雨はひそやかな銀

さようならをうまくただしく言おう
そのためにわたしは今日も
ほそくほそく
するどくするどくするどく痛々しく
尖らせた鉛筆で
「さようなら」を練習する

こぼれだすわたしのさいごのいたみ
それはちいさくしたたかに
きみの額で呼吸している
この夜がおわりなんだと
いつ
いつきみに囁こう

どくどく、注がれるかなしい白さにわたしの
咽があつくなる、あつくなる、あつく あつく あつく
涸れることない海へ
どこまでも泳いでいけたらいいのに。



さようなら
さようなら
さようなら




その眉間のしわが
大好きでした






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