展望台でみる空/朧月
夜風をぬって届かせたい夢の国の
ドアはそこにあると思う
この手に触れそうだから
春風にゆられ木にぶらさがっていたい午後の
遊覧船みたいな あやふやになりたい
星のみえない夜
月は大きく隠れている
だれかのげんこつみたい
思わせぶりな 広さで
そこに浮いていればいいのに
あればいいのに
わざと隠れる雲の後ろに
月は意外にいじわるです
いつも確かめてしまう
自分のカラダの位置
抱きしめたい細いカラダは心のようだから
そして どこかずるくて
夜風はもう
春のそれなのに
ちらほらとしか咲いていない桜の小道は
なにかを実現させてくれそうで
期待が大きくなっている
何度訪れても 春はあやふやで
別れと出会いのような
花びらのダンスに
願わないと決めたことも忘れてしまう
空にのぼりそうになる
展望台の上で
下心のある月を真似て
いたずらに しかけてみる
誘うための でんわを
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