名前を知りません(春について3)/クローバー
 
名前を知りません、
ごめんなさい、と言います。
花を花と言います。
しかし、君には、
きっと、それなりの名があるのでしょう。
僕は、君を表せません。
散歩をしていると、思うのです。
なんて少ない言葉で生きているのかと
紫の小さい奴も、
白のトゲのある奴も、
花壇に植わったあいつでさえ花、
としか言えない。

おいでダンデライオン、
君くらいだよ呼ぶことができるのは
「それは集団名であって、個人名ではない」
ダンデライオンが言う。
ギザギザした葉っぱで言う。
花占いには適さない、花びらで言う。
それじゃあ、なんて名前なんだ、
と言おうと思ったけれど
すべてに名を尋ねていたら、季節が変わるだろう。

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