桜の風/朧月
 
遠くのほうに自分を置いて
春の桜を引き寄せる
欠けてしまったパーツのような
花びら心に埋めたくて

胸にぎゅうっと抱きかかえ
時間の流れに流れつつ

どうでもよいか と手を離す

春でなければならないのではない
花でなければならないのではない

あまりにも
咲いていることがありがたく
まるで 救いに感じてしまったから

自分の迷いを彼方に置いて
桜つまんで引き寄せる
透明になれるかもしれない

花びらと空中の
間をぬって浮遊すれば

春に染まるかもしれない
置かれた迷いは 風化すればいいのにと
夜になっても 取り込まないで
桜の風にさらしておこう


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