世界/荷花
水面にはカミガヤツリが揺れていた
泥沼は何一つ
見通せず
空は
濁り曇って
浅葱色 べったりと塗り広げられた
枯れた木は
黒くひねこびた枝を
痩せた湿地に 這い蹲らせ
天を仰ぐ
鋭く尖る枯枝は
空を掻きむしろうと
小鳥は睡蓮を歩いて渡る
さも
うつしょは容易いことばかり
そう
気取る金持ち
黒く枯れた木が
それを見ていた
湿地に這い蹲る
黒い枝がそれを見ていた
骸がそのように在るならば
恵まれぬもの とは 何か
水面にはカミガヤツリが揺れていた
泥沼は何一つ
見通せず
空は
濁り曇って
ああ ここ こそ が
目眩く、
――世界。
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