鳥籠のキリン/小川 葉
鳥籠で
キリンを飼うことにした
キリンは可愛らしくて
このまま鳥籠より
大きくなってほしくなかった
けれども心は違った
僕がいない時
沈む夕日にアフリカを見ている
キリンの気配を感じていた
小さくふるえて
目には哀しい
オアシスを湛えていた
僕はキリンに話しかける
人間だから
人間の言葉で
なるべくやさしく
キリンが答える
キリンだから
キリンになりたいのだと
やさしく鳴く
翌朝
旅立つキリンを見送った
やさしさだけが残った
夕日が見える
鳥籠の中から
長く伸びる首の影が見えた
僕は嬉しくて
鉄格子を握りしめ
自分の子供の名を呼んだ
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