詐欺師の匂い/夏川ゆう
 
お元気?と聞き覚えない声がする電話の向こう詐欺師の匂い

何歳になろうと夢は美しいあの世この世の間で揺れる

台風が接近中と告げる声眺める空に恋文飛ばす

退屈な授業に背中向けたまま遥か彼方の夏休み想う

部活終えガールズトーク繰り広げ夕焼け小焼け控え目に響く

アルバムを開けば笑顔笑顔だけ花の薫りに似た夢がある

図書館で芽生えた恋は色褪せず本の数だけ生まれる想い

最近の流行りについていけなくて殻に籠ったサザエを睨む

東京で孤独に歌を書きながら故郷に咲いた花に口づけ

良いニュース飛び込んできた寒い朝身体を焦がすほどの喜び
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