波がひけば
それを追いかけて
靴を濡らさないように
足が冷えないように
事実だけを伝えて
その真ん中にある感情を
単純に「痛い」なんて声高に言わないきみを聡明だと思う
そんなきみのかたい顎のライン
触れていいのか、わからないから黙っていた
きみを聡明だと思う
それと同じくらいきみを
かわいそうだと思うのはわたしだけでいい
(かわいそうなんていうのはわたしの傲慢かもしれないけれどもやっぱりわたしにきみはかわいそうなにんげんだとみえてしまうんだよ、ごめん)
波打ち際のポールにきみはのぼって
海にたつ
水辺線を眺める束の間の孤独が
春の日差しに少しずつ乾いていく音がする
今日のこの海を誰も知らないなら
きみの告解だけがささやかに
波の音にまぎれていけばいい