幻の嘴/蒼木りん
私が見ているのは
しだいに枯れ木となってゆく貴方の
風に微かに揺れる枝の指先
上に 上に
よりも
天に 天にと手を伸ばして
貴方は何を摑みたかったのか
貴方は
意地悪だから
いえ
優しいから
私は詩(うた)を唄い
貴方の肩にとまることを許された
選ばれた小鳥であった
寂しいのだ
貴方は
それを
けして認めたりはしない
葉陰に隠していたものへの疑念に
耐えきれず私は
狂って鳴き
羽根を捥いだ
いま
私が見ているのは
しだいに枯れ木となってゆく貴方の
風に微かに揺れる枝の指先
喘ぐように天を掻く指先から
貴方の最後の夢が離れて
秋風に舞う
私はもう
小鳥ではないけれど
舞い落ちてきたその枯葉を
幻の嘴で拾う
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