ざわめく森の中にあって/朧月
 
ざわざわしている森の中で
私の命だけが静かでいる必要はないのだ

煌いている光の中で
緑にも影がある 川の光も影を持つ

入ってみない?
なんて聞く前に足を踏み入れてもいいのだ
川には持ち主はいないのだから

湧き出ている水はいつから生まれた?
だれからの命かを考えないでいい
のか 探すのは木漏れ日が心地いいから

学生服のまま 泣いているあのこを想う
あれは あれは
だれでもない ここに住んでいた少女

ざわざわしている森の中で
私の心だけが静かでいる必要はないのだ

風に揺れている枝 葉の先まで
黄砂に運ばれた かの地の少女の涙は
つもって その重さこそが
命の静けさであるのかもしれないのだから


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