桜妄信/朧月
 
その花は春に咲くという
涙のかたちの花びらだという
人の心の色だという
震えて散ると思われる

想い重ねて
見るべからず と看板たてて
宴が行われているという

血を探して求めて
いなないている馬がいるという
兎がいるという

踏みにじられた花びらから
再生する ウラミゴトがあるという
ミレンもあるという

断ち切る
ためのうたがあるという
生まれるという


という魔

せいぜい咲くがいい
散るがいい
誘うがいい

魅了されながら 占領されながら
乗っ取られることに抵抗しながら
感覚すべてをもってゆかれるよ
もってゆかれるよ


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