窓越しに見えた月も/瀬崎 虎彦
ああこれはピスタチオの匂い
君が僕の唇に触れた指先
僕はたゆたう 海月のようにたゆたう
窓越しの月もまどろんでゆれる
悲しいことはすべてなかったことにして
手拍子に合わせてわらったりおどったり
気持ちが高ぶりそうなときは薬よりも先に
君と僕という組み合わせで様子を見ないか
ひとがひとりでいるのはよくないと
僕は外国のまちを一人歩きながら
ずっとずっと考えていた
そして今もそれが正しいと思っている
それが正しいことを証明したいと思う
窓越しに見えた月も雲に隠れてしまった
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