アラスカ6〜ここへ来る理由/鈴木もとこ
 
ヒの森が広がり、針葉樹の爽やかで深い香りに包まれながら、苔むした
倒木の間を歩く。所々黒く焦げたような木もあり、垂れ下がった苔のカーテンの緑との
コントラストが一層不思議な雰囲気を醸し出していた。
「これは落雷で倒れたんですよ」とコリン君。「こうやってハイキングをしている時の
カミナリは本当に怖いです」と真剣な顔で言うのでちょっと可笑しかった。確かに釣り
の時のカミナリは日本でも危険だものね。
 ふわふわした落ち葉の場所を通り過ぎて、少しずつ上りになる。
赤リスがチチチ・・・と木の上で警戒の声を出している。がれきの上に茶色いネズミが
チッ、チッと短く鳴いている・・・良く見るとナキウ
[次のページ]
戻る   Point(2)