青噛む春/水町綜助
 


あの時誰かが血を通わせただとかいう
そんな街はもうたくさんだった



新緑の葉脈はもちろん、
青噛むような桜
セルがひとつずつ
つぶれていく音が顎を伝う花びら、
そして秋の枯れ葉と言えば乾いて
割れた断面に
静脈の黒い血の玉が無数に膨らむようだ、
(なんて考えたことはねえが

そんなことが彩度も高く青々とした晴天の下で繰り返された
箔を押したようにならされた

だがそれも些細なことだと、
溶け残った砂糖もゆっくり渦巻きともるし、
僕もうなづく
なにしろ

この街で僕が昼夜行う
写真の焼き増し作業と
その写る風景は装置で
へらへらと自嘲の
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