春のゆめ/朧月
 
僕は死体で 君は春風で
君は僕の頬をなぜてゆく
僕は横たわりながら君の温かさにとけてゆく
春のゆめはとうとい

僕は待っている
春の風にまぎれて君があいにくるのを
僕はもうしんでいる しんでいる

僕の死体を全部 うけとって花になって土になって
せかいになってゆく
そんな春のゆめはとうとい

僕のばらばらとした記憶は
黒い土にとけこんで 塊
になってこのせかいをつくっていくのなら

僕は死体で 君は春風で
そうならいい そっと手を動かして ふれたい
君はただ僕のうえをなにも言わず通り過ぎればいい

それがもう春なんだ
それでもう春が 僕をこえて季節になってゆくなら
春のゆめはとうとい 僕がいた証になって
また 巡る春のゆめは とうといまま すぎてゆく


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