3月の雪/瑠音
 


春に 嫉妬しているようだねと
あなたの言葉が美しかったから
少し、お借りすることにしました


紳士淑女が
自分の仕事について誇らしげに語らう日曜日の朝
少し距離を取って見た窓の外は白く
非 現実的な世界が
私を引き留めているようでした


いつも
冬はなにかのきっかけとして私に優しく
けれど
それはいつもそのあとに待つ
暖かな春への待ち時間として


そしてこの冬も
私は春へのきっかけとして
静かに静かに
雪の中で星を見上げていたのです


明日には
明後日には
春が来るのではないかと
少し雪の溶けたアスファルトに座り考えを巡らせ
思い出をゆっくりと逃がしていた金曜日
あの日ゆるりと染み出した思い出が
今日この雪に埋まるなら
やはり冬は
私に優しく
けれどそれでも
私には春が待っていて


花を 待ち
雪に 手を振る 人


まだ 逃がさないと
いっそ言ってくれたら
その嫉妬心
もっと
もっと
まっすぐに伝えてくれたのなら


優しい
けれど
甘えさせてはくれない



右手
染み出した思い出に雪が落ち
溶けました
私はもうすぐ
春へ向かう旅に出ます






戻る   Point(1)