きみに届くように/あぐり
 
たしが高らかに言える言葉はいつだって
ごめんなさい、だけです

くるぶしをかすめて
名前も知らない古代魚が泳ぎ去っていく
溺れることもなくひとり
ただこの底で呼吸をしている
水の中なら、吐いたものが見えるから、
わたし、そういうの好きよ

声高に
きみに言おうか
あいしてるって
それからすごく、痛いんだって
あいたいって
さみしいって
やっぱり離れたくないんだって
なにもかもにきみの影が残った部屋にひとりなんだって
まだきみとみたいものがあるんだって
話したいことがあるんだって
嫌わないでよ
嫌わないでよ
そばにいてほしい
髪を撫でてほしい
泣かせてほしい

あいしてるって
あいしてって
わたしをあいしてって

声高に言おうか
この夢から覚めた時には きみに
きみに届くように




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