わからない/寒雪
 

ずいぶんと
人生を過ごしてきたぼく
花吹雪が舞う
本通りを歩いていると
ぼくは
いきなり
わかってしまった
ぼくは
自分が
わからない


長い間
生かされてきたぼく
積み上げた思い出は
決して多くはないけど
恥じ入ることじゃない
けれども
自分が
一体何者であるか
わからないなんて
まいったね


そんなぼくの周りで
薄ら笑いを浮かべた
みんなが
あなたはこうよ
きみはこうなんだ
なんて
口々に
ぼくのこと
わかったような口をきいて
ぼくを
落とし穴に埋めようとする


ぼくは
ぼくがわからない
自分という人間が
何なのか
はたして
本当に人間であるのか?
それさえも
わからない


みんな
すてきだね
おそれいったよ
みんな
ぼくのこと
研究でもしてたのかな
一番身近で
毎日接してきた
このぼくよりも
みんなの方が
ぼくのこと
より深く理解していたなんて


みんなの声を
録音して
僕の海馬に
押し込めてしまおう
少しは
ぼくらしくなれるのかな

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