地下水脈のさかな/フミタケ
科学者風の初老の男に案内され僕は
たわいない冗談もいいながら気軽に
バイオハザードのそれかと思うくらい
深い地下まで降りて行く。
科学者風が見せてくれたのは
マグロ大の深海魚のような魚。
彼は目の前でそれを頭と尻尾、
真っ二つに引きちぎり
足下にある地下水の川へ投げ込む
冬の雨に濡れるアスファルトのような色をした
その水の中で2つに裂かれた魚はそれぞれ
沈まず流れに乗る。僕たちはそれを
何か巨大な水晶のようなもので見ている。
流れに乗った魚の頭の切り口から肉片がこぼれ
その肉片が稚魚へと変わって行く
かと思っ
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