さ もん/イシダユーリ
 

おちていくものも
ない
ただ
ごうごう
ごうごうと
口ずさんでいる

いまは だれを たたきわるの?

ふるわれる 暴力は いま だれのもの?

こいびとは
ずっと
眠っている
忘れるには
時間では
たりない
死んだこころが
楽器になろうと
群れるけれど
よりかかる崖を
もたない藻が
からみつく

誰の腕ならば
切り取ってもいいの

誰の眼ならば
えぐり取ってもいいの

誰の肋骨ならば
へし折ってもいいの

誰が ひとに なってくれる

ずっと ひとが いない

透明のなか
ながれている
ひっきりなしの
あらしを

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