船/鈴木陽
 
真に雄弁に宿っている。だから我々は、その来ることになるものを、回顧を通じて発見でき、そのために保護される文字たちは膨大なものとなった。書庫に堆積されていく大量の写真からなる図鑑には動物の骨が描かれているから、我々はそれを手にとることが出来る。写真は書庫の床にうずたかく積み上げられていて、我々はその上から数冊抜いて見返すことが多いけれども、その深い地層に埋まっている、記憶の底に閉ざされた写真を蘇らせることもまた船員たちの、楽しみであった。忘却され色あせてしまった、写真のもつ動物の目はひどく明るく、そこで写真の中から、その美しい目が我々に注がれることが、我々の糸の結びを逆転させる。その写真の撮影された
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