生まれる場所/いっと
 
           水辺で老人が少年と釣りをしている、のは創造ではない。記憶である。誰の頭も、何も作れない。・・・・隣人のしたり顔を見ていると、腹立たしい。お前の頭の中には何もないよ、からっぽだよ、と、教え、かける。のをすんでのところで踏みとどまる。おせっかいは野暮だ。隣人は何も知らずに死んでいけばいい。

(したり顔をしているのは私・・・?)

「キーボードを叩いた」のはいつ? 昨日? するとこのインクの染みはいつのもの? 誰が、いつ、何を、どのように、考えた? 今の今に今を閉じ込める作業。その不可能さに、途方の無さに、思わず涙が出てくる。


・・・集める、記憶を・・・・それを
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