風の夜/朧月
一人がすきなのかってあなたが笑うから
一人なんかは大嫌い
そんな風に言うのでした
窓をあけて冷たい夜風をあびながら
とうとう一冬中そのままの風鈴が
かきり と音をさせる風だけの夜
嘘をつくなとあなたが白むから
本当ですと潤む目を伏せる
ぞくりとするほど寒いのに
お酒を飲んでるあなたは平気で
からん とグラスの氷が鳴いた
ちぐはぐだけど やめられない
そんな晩餐のような呼吸の中で
出て行きたくても出て行けないと
あなたは私ばかり 恨んでいるの
ごめんなさい
とは 言えなくて
さようならなんて もっと言えない
だって 弱いから
あなたが?
私が?
夜は震えて 風鈴もグラスも氷も
あなたの指もなんとなく揺れて見えるから
そっと握りたくて 私の心も震えた
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