さよなら 三日月/朧月
三日月の先にしがみつきながら
私 何がこわかったんだろう
考えに夢中になって 手を離したら
頭からおちながら 見えた風景
山沿いの小さな屋根
箱みたいな家の
中にも人が住んでいるの? と
母親にきいた 幼い私
母はなんと 答えたのだろう
父親のうちに 抗議をしにいく電車の中で
父親は不在で ほっとして
待つという 母の背がおそろしくて
離婚のための果し合いが
行われないことを切に願った
自販機にでもなりたいと本気で思った
電信柱でも かまわないと思った
薄汚れた トイレのタオル
目に焼きついて
父が住んでる アパートを出た
帰りの電車も同じ道を
たどったはずなのに 家が見えなかった
三日月にしがみついてる私にとって
何が 一番恐ろしいのだろう
この手が 離れたと気付いたけれど
離したという気がしたから
おちることにしました
家族は バラバラになっていって
心はどうなったのか 確かめられなくて
しがみついた三日月は時々冷たくて
とうとう 今夜はその手を離しました
この心も 離れました
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